冬枯れの鹿島鉄道

 鹿島鉄道の屋台骨を支えていた航空自衛隊百里基地(現茨城空港)への燃料輸送が、トラックに転換されてしまったのは2001年のことでしたから、既に20年近い歳月が経ってしまったことになります。何の変哲もないローカル私鉄に走るタンク列車を撮りに、何度も出かけました。

 1992年の師走、思い立って鹿島鉄道を訪れた日は北風が強くて大層寒い日でした。沿線はすっかり冬枯れの風景です。春にはきれいな花を咲かせる浜駅近くのの桜も、すっかり葉を落としていました。この季節、風景から色が消えてしまって、ただ空の青さだけが印象に残っています。モノクロ写真を撮っていた頃は全然気にしていなかったのですが、カラーフィルムを使うようになると、冬枯れの季節の写真撮影では、この景色の色彩の乏しさに悩まされました。

 そんなこともあって、この日は冬の青空を画面に少し多めに入れて撮ってみました。列車もぶどう色の機関車と黒いタンク車です。冬枯れのモノトーンの景色の中で、冬の青空だけが印象的な、そんな写真が撮れてちょっと嬉しかったのを憶えています。
 
(1992.12.5 鹿島鉄道 浜-玉造町 Kashima railway Hama - Tamatukurimachi)