僥倖
 この日、葉柏寿での収穫は実質、変則三重連1本という結果になってしまいましたが、めげずに今回のツアー最後の目的地、承徳へ向かってバスは走ります。ところが建平の街を抜けてしばらく行くと、列車のものと見られる白煙が見えてきました。近づいてみるとそれは承徳方面へ向かう貨物列車で、しかも後補機付きでした。これは非常にラッキーなことです。この地の物流の主力は赤峰方面から葉赤線で葉柏寿に出て、錦承線で東北地区へ向かう石炭列車でしたから、葉柏寿から承徳方面へ向かう貨物列車の本数は少なくて、前回の葉柏寿訪問時も撮影していませんでした。

 幸い勾配を上る貨物列車の速度は大層遅かったので、すぐに追い越すことができました。ガイドのFu氏がバスを停めたのは、なだらかな山並みをバックにこの地方独特の荒々しい地形を走る、なかなか好ましい撮影地でした。もう列車はそこまで来ていて、前進型のブラスト音も聞こえてきますが、一歩一歩大地を踏みしめるようにゆっくりと勾配を上ってきますから、カメラ2台の設定を決めてからビデオをセットする余裕もありました。

 傾きかけた冬の午後の光の中、後補機付きの貨物列車が白煙をたなびかせて視界に現れました。それは何とも平和な光景でした。失望と嘆きで始まったこの一日でしたが、変則三重連や後補機付きの僥倖にも恵まれて、終わってみれば何とか形になっていたところが不思議です。

(1998.1.2 錦承線 紅石-河湯溝 Jincheng line Hongshi - Hetanggou)