熱水・承徳~耐寒撮影紀行 3
 穏やかな冬枯れの景色は一日で一変し、熱水は冬山になっていました。

雪山賛歌
 大晦日は早朝から雪となり、視界がきかないため、終日経棚側のスパイラルで線路端の撮影となった。ああ、今日もまた熱い温泉に入れる。
 大晦日の晩は爆竹で盛り上がり、明けて元旦である。天気は曇りであるが雪もやみ、今日は客車も来るとあって、私たちは再び、ホテルから熱水側の山へ登り始めた。O氏は朝食もとらず既に出発したとのこと。私も昨日積もった雪を踏みしめつつ、徐々に高度を上げていく。雪化粧した山並みが美しい。雪が風に流されていき、青空が顔をのぞかせる。「これで今日はいい天気になるな。」などと思いつつ、一歩山頂に歩みを進めた途端、
 「何なんだ!、これは!」
 そこには、想像を絶するような、横なぐりの風と地吹雪が吹き荒れていたのであった。気温は-27℃、風速は軽く15mを超えて、とても目を開けていられないような、まさに「大地の子」の世界そのものである。わずか2mも山を降りると風はかなり弱まるのであるが、360度の視界をものにするためには、風をよけてばかりいるわけにはいかない。
 「熱水は風が強い。」という話は聞いていたが、一昨日までの穏やかな天気に慣れていてしまった私たちは、改めて冬の内モンゴルの厳しさに肝を冷やしたのであった。
 幸い眼下には、貨物列車のものとおぼしき白煙を望むことができる。とりあえず山頂で重連を1本撮影した我々がほうほうの体で山を降りたのは言うまでもない。しかし、勇敢なA氏は、その後も山頂に残り、寒風に耐えつつ撮影を続けたのであった。
 (登山もするF氏によれば、当日の山頂の状況は、日本であれば3000m級の冬山で、最も状況の悪いときに相当するそうな。しかも、登山をする人は、そんな天気の悪いときには、1日中テントから外に出ないそうである。私たちは、そんな所に機材を背負ってのこのこ出かけて行ったのであった。何てこった。)
 そして熱水最後の日、1月2日こそ、今回のツアー、いや、私にとっては、今までの鉄道撮影の中で最高の、光り輝く1日となった。
 この日、経棚側のスパイラルは晴れわたり、真白に雪化粧した嶺々は光り輝き、白煙は天高く奔放に吹き上がる。ロングにアップに、順光に逆光に、アングルは自由自在で、まさに撮りたい放題である。
 眼下を驀進する重連のブラスト音に、胸を踊らせながらシャッターを切り続け、興奮もさめやらぬままに、雪山の彼方に走り去る重連を見送る。撮影地を移動すると、息つく間もなく、もう次の重連の白煙が舞い上がっているのが望まれる。ビデオは回り続け、スチルのフィルムもいくらあっても足りない位である。
 その晩、私たちがホテルの部屋で遅くまで祝杯をあげ続けたのは、言うまでもない。

(1997.1.2 集通線 下坑子-上店 Jitong line Xiahangzi - Shangdian)

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